No.002_13 [Songs for MANA]
「ありえないね」
エナ=クロスアウダ市。連結都市クロスアウダのNo.32、入植もまだままならない小都市だ。
その役所の一室に、開拓団のリーダー・アキハルは呼び出されていた。
彼のほかに部屋にいたのは、この都市の管理官だという中年の男と、セルシャ市からアキハルたちの開拓団護衛を務めたササキとミヤモト。そして情報局の諜報員だ。
先ほどからずっと喋っているのは、ミヤモトだ。
「この地域で緯度が三十五度より低いと、ヴェニス種は育ちにくいんだ。マーマーと同種を基盤樹としているエウノミア政府がこの土地を抑えたとは思えない」
エナ管理官もうなずく。
「ここはまだ見てのとおりの辺境です。周囲に主要都市となれるほど大きな都市もない。普通なら、アトラス種にふさわしい土地でしょうね。繊細なヴェニス種には、難しいと思いますし、うまく根付けなかったときに開拓民がすぐ避難できる都市がない。・・・作為を感じます」
「つまり・・・・・・エウノミア政府は、旧マーマー市民を厭って適当なところに追いやろうとしている、ってことでしょうか?」
そう尋ねたアキハルの声は、少しだけ震えていた。
覚悟はしていたはずだ。
彼らが都市を作る場所――〈根付く地〉は、普通の開拓団の三倍の道のりの先にある。その事実は前もって伝えていた。
だが、はっきりと政府の仕業だと聞いて、改めてショックを受けているようだった。
マナも少なからずショックを受けている。同じ人間が人間に対する仕打ちなのかと思うと、悪寒が走った。
この状況が最悪にも思えるのに、ササキがさらに苦い顔をする。
「適当なら、粗雑さを感じるだろうが、俺たちは作為を感じているんだ」
アキハルは言葉を失った。
マナはいらいらと、指で会議テーブルを鳴らす
「・・・厭って、わざとうまくいかないようにしている?」
「そう。無駄じゃないかと思うくらい周到だ」
「無駄。周到。――はっ!やっぱり私がエウノミアに一度行くべきだったね」
「マナ」
苛立ちをまったく抑えないマナに、ササキが非難の目を向ける。
「少しは自分を抑えることを覚えろ」
「私個人の些細な欠点なんかよりも、重大で悪質なことが目の前にあるよ」
「マナ」
今度はマナの正面斜め右、ミヤモトの静止の声である。二人から抑えられると、さすがに黙るしかなかった。
「・・・・・・旧マーマー市民の、なにが・・・、俺たちは、そんなに酷い扱いを受ける理由が、あるん、ですか?」
左側にいたアキハルのあまりに暗い声に、マナはぎょっとした。
考えれば当然だ。――彼らは、殺されかけたも同然なのだから。
「私らにはわからないよ。ただ、これに対する解決策はこちらで練る。きみらに必要以上のリスクは負わせない。だから、そんなに落ち込むんじゃない」
ミヤモトの慰めは、ほとんど通じなかった。
ササキが苦い顔のままうなり、やがてマナに言う。
「宿舎に戻っていろ。話は後日だ。それまでにこちらも、話を詰めておく」
もちろん、アキハルを連れて、である。
マナは隣のアキハルをちらりと見遣った。
「・・・・・・わかったよ」
肩をすくめて、現状を受け入れることにした。