No.001_06


「クロスアウダが言ったんだ。――これは戦争だと」
「戦争?」
「そう、この世界に生き残るための」
 ネールラが一族のマナと呼んだ少女は、白く染め上げられた世界を臨むテラスで私に向かって語った。大地は朝日を浴びて、金とも銀とも付かぬ色でまぶしく輝いている。少女はそれこそ白なのだと言った。
 テラスはネールラの体の一部で、素朴な造りをしていた。外気を遮断するものはない。だから長い間ここへ出ているのは危険だったのだが、少女が私をここへ誘った。
 白い世界も綺麗だから、と。
「これが、世界だよ。私たちの世界だ」
 実際、まぶしすぎるほどの光景に不思議と嫌悪感はなかった。
 白は忌み嫌うべき毒の色なのに。
「白き毒に支配された世界、です」
「でも私はこれを綺麗だと思うんだよ。遮られることのない、静寂のアリアを。――わからないかな?白き彼らも、間違いなく生きてるんだ」
 そして、と少女は続ける。
「そして、生きているからには場所を奪い、命を奪う。――樹は、白き彼らと場所をめぐって争う。それだけの話」
 彼女の言い分は、事実だ。人はそんな風に考えやしないけれど。
「エルネルラ・キア。あなたに、・・・おそらくあなた宛なんだけど、聖なる森の老から言葉を預かってるんだ」
「老・・・?」
 聖なる森。
 老。
 都市樹たちが時折口にする、そして本当に稀だが運送屋の中にはそれを口にするものもいる、――だが一般人にはまったくなじみのない言葉だった。
 それが何者であるか、今問うことはルール違反のような気がして、私は黙って彼女の言葉を聴いていた。
「白き世界の見える場所にて、これを伝える――」
 響く歌のような言葉を聴きながら、私は静かに、確かに、思った。

 ――ネールラはここから再生する。



--*--



 愛しき隣人へ、白き世界の見える場所にて、これを伝える。
 そなたがこの白き世界を美しいと思うのならば、そなたはおそらくネールラを理解するであろう。そなたがこれを美しいと思うのならば、――すなわちネールラは滅びぬだろう。

 愛しきヒトよ。

 これは戦なのだ。われわれと白き彼らの。愛しき白き隣人を滅ぼさねば、愛しき同族を失う。悲しき戦の姿だ。
 そなたがこれを理解することを、切に願う。
 愛しき脆弱な種よ。
 われわれがそなたらに与える清らは、隣人との争いを悲しむわれわれの涙と知ってはくれまいか。
 そして思い出してはくれまいか。
 われわれ一族と、そなたらとの契約を。





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