「寝起き」 ―― ある高校生の優雅な朝
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ばち、と目を開けると愛用のイルカ型目覚し時計が目に入る。一度目をあけても長い事あけていられない、僕はこの目の現象が二度寝を誘う人間の体の仕組みだと信じて疑わない。――と言っても、時計の針が示す時間を見たら体の欲求は無視しなければならないだろう。
「うがっ」
誰も聞いてやしないのに、思わず口から奇声が洩れる。
ぐわーっ、目覚ましかけ忘れたっ!!
現在時刻、七時五十分。もちろん朝です。
さあ、八時には家を出なきゃ一時間目の授業に間に合わねぇ。どうする、おれ。
布団を跳ね除けて、部屋のドアに突進する。額をドアにぶつけながらも脱出成功、この時間帯うちのトイレは混む事が多いから早く行かなくては。っつーか、朝飯!着替え!学校のカバンどこ?!
階段を駆け下りるうち、階段の残りわずか三段のところで踏み外して落ちた。ケツ打ったぞ、痛ぇぞちくしょー、たかが三段、されど三段。階段もばかには出来ません。
ついでに頭も打ったらしい、額の右辺りが痛い。さっきおでこぶつけたばっかなのに・・・・・
その瞬間に思い出した。
(どようび・・・・・・?)
頭を打った衝撃か、今日が土曜日であることを思い出した。
やったぜ、週五日制!土曜日よ、文部省よ、ありがとう!!
すっきりした気分で、僕は二度寝を決め込んだ。
ああ、いい夢見れそう・・・・・
朝日が射す中、布団にもぐりこんだ瞬間に、幸せな眠りに落ちるのだった。
ぴーえす。
トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル・・・・・・
「ひゃい、もしもし・・・・・」
「もしもし、K高校の林ですけど――・・・」
「あれ、先生?どしたんすか?」
「どした、じゃなかろうがっ!今日は模試じゃ!」
完(このお話はフィクションです)