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02
砂漠の端の荒野に小さな村がありました。乾いていて、貧しい貧しい村でした。
ある日そこに、雨が降りました。とてもめずらしいですが、まったくない話ではありません。
雨はとても貴重です。ある村人はこの雨をこの村のものにできないかと考えました。そうすれば、作物が乾き枯れていくことはありません。村はきっと、豊かになるでしょう。
村人は、壷に雨を押し込みました。しかし雨はすぐに逃げ出しました。
今度は井戸に雨を閉じ込めました。やはり雨はすぐに逃げ出しました。
村人は、村に住んでいた魔法使いに尋ねます。
「雨を閉じ込めておく方法はないだろうか?」
魔法使いは「では、白い紙を用意して欲しい」といいました。「そして、雨を待ちましょう」
村人は魔法使いが言うとおり紙を用意しました。
「でも、紙では水は汲めないよ。紙がふやけてしまう」
村人は心配そうに言いました。
魔法使いは、「心配要りませんよ」と言いました。
さて、雨がまた降りました。
魔法使いは村の中心に紙を置いて、魔法を掛けました。
「えい!」
するとどうでしょう。
雨はまわりの景色ごと、紙に吸い込まれていきました。