34 OTHER SIDE
薫子の病状を知る者は少数だ。春日の頭領と、十家の当主、そして薫子の母親である百家の当主と、孜子自身。当初、薫子が自身の病を明かしたのはこの四人だけだった。
薫子は頭領を前に、言った。
「わたくしの命は、一年を待たずして尽きるでしょう。ですから、これからわたくしがやることを見逃していただきたい。死にかけの人間に出来ることなど、限られておりましょう?」
どうするつもりか、と頭領が問うた。
「わたくしは・・・己の力量がどれほどのものか見てみたいだけです」
ふむ、と頭領は頷く。そして、十家の当主と二言三言交わして、にっこり笑った。
「好きにするがいい。すでにそなたの存在は、議会や分家の抑止力となっておる。派手に動けば、なおさらのこと。――この際じゃ、蓮。露払いしておけ」
ついでのように十家当主――蓮にかけた言葉の意味は、各家につき過ぎた権力を削ぎ、不要になった分家を潰せ、である。
「薫。して、どのように己の力量を見る?」
「そうですね・・・――この一族を潰してご覧にいれましょう。というのは少し時間が足りないかもしれませんが・・・」
薫子はおそらく、冗談のつもりで言ったのだろう。
しかし頭領は、鷹揚に頷いたのだった。
「よい、やれ」
「・・・じじさま?」
「そなたの二十年の年月が、明治より続くこの歴史を崩すとな?大いに結構。わしは邪魔をせぬ。高みの見物じゃ。――おお、そなた一人では、遊ぶに遊べまい。慶藤でも誘ってみたらどうじゃ?」
これには、母も孜子も、そして薫子や蓮でさえあっけに取られていた。
そんな中でいち早く我をとりもどしたのは、やはり薫子。
「彼は誘わなくとも、すぐに来ることでしょう」
本当にそうだった。
フジは間もなく、独自に薫子の病状を突き止めた。他の家の多くの間者が薫子の周囲を探っても、何一つでてこなかったのに。
このほかに、薫子の病状を隠す工作ができるという理由で、真家の当主にも事情が話された。
ずっと後になって、弓弦と現一もこれを知ることになる。
家族――妹である萩子や煌子には、知らされなかった。