11
会議の開催は数日後と決まっていたのだが、電話のすぐ後に直接家に伝令役と呼ばれる若い間者が来た。「真家の当主は今夜春日の屋敷へとお越しくださいませ」――そんな指示を持って。
よって、楽しいはずの家族での外食はぴりぴりしたものとなり、弓弦はいざよに代わって宮野の屋敷へ出向くこととなった。
「いいんですか、ぼくまだ研修医ですよ」
いざよが宮野の屋敷を訪ねるのは、宮野の人々の健康チェックが目的である。当然そこには医療行為もあり、新人があっさり手を出していいものとは思えなかった。
「高校生のうちにさんざん病院で基礎知識たたきこんであげたでしょう。そこらの研修医より、ずっと経験つんでるはずよ」
「いや、そういう問題じゃないですよ。――それにぼくあの屋敷嫌いなんですけど」
「ぐずぐず言わない。――あ、胡月も弓弦についていきなさいね。今日の晩はお父さんも当直で帰らないから、家に一人でいるのは危ないわ」
「あぶないって、何が危ないんですか?」
「もし胡月ひとりのときに強盗でも入ったらどうするの」
「警備会社に通報がいきます。この前契約したばっかじゃないですか」
「ばかね、警備会社の人がつくまでに胡月に何かあったらどうするの。――ということで、胡月。弓弦と一緒にいきなさいね。何かあったら弓弦を盾にしなさい。一応春日の訓練受けてるから、その辺の男よりは使えるはずよ」
たぶんそれは間違いだと思う。とは口に出さなかった。
弓弦も確かに、春日の戦闘訓練を受けている。だが生来体を動かすことが嫌いな弓弦はまじめにやっていないし、たいした才能もなかった。本気でやったことといえば、致命傷にならないための受身などを含む、名前のとおり護身術である。端から武芸を磨くことをあきらめている。
「おかあさん、ニイやん盾にしたらかわいそうですのん」
「大丈夫大丈夫、真砂の家系は早死にだけど強運だから」
「何ですその矛盾」
「早死にって言っても、おじいちゃんがなくなったのだって六十六のときだから、そんなに早いってわけでもないわよね」
「お母さんあと十年くらいですね」
「うふふふふ、さっさと孫の顔見せなさいよ」
本気の念がこもっていて怖い。
弓弦はその場を引きつった笑いで誤魔化した。